娘が小学生のころ、PTAの活動で小学校の低学年と高学年のクラスに、絵本の読み聞かせをしたことがあります。お話を聞く時の子どもたちの反応はとても正直で、面白い話にはくすくす笑い、チョット悲しい結末にはシュンとなります。いつも喜んで待っていて、お話に身を乗り出して聞き入ってくれるので、私にとっても楽しみな時間でした。そして私も、学校や公立の図書館で絵本をさがすうちに絵本の奥深さに惹かれ、いろいろと読むようになりました。
そんな時、佐野洋子さん著の「100万回生きたねこ」に出会いました。
主人公は、100万回死んでも100万回生きかえった「ねこ」です。飼い主からも多くのねこ達からも愛されるのに、「ねこ」は「だれよりも自分が大好き」で、自分以外を愛することを知りませんでした。そこにたった一匹、「ねこ」に見向きもしない美しい白いねこが現れます。「ねこ」は、初めて白いねこのそばにいたいと願うようになりました。やがて2匹の間にたくさんの子ねこが生まれると、「ねこ」は自分よりも白いねこと子ねこを好きになりました。
長い年月が経ったある日、おばあさんになった白いねこは、「ねこ」のとなりで静かに動かなくなってしまいます。「ねこ」は初めて泣きました。泣いて泣いて泣き続けて、とうとう「ねこ」も白いねこのとなりで動かなくなり、そしてもう決して生きかえることはありませんでした。というお話しです。
読み聞かせを1年間続けると、最後に子どもたちからお手紙をもらいました。驚くことに、多くの子どもたちが、一番好きな絵本に「100万回生きたねこ」を挙げていたのです。幼い心にも響くものがあるのでしょう。生きるのにとても大切なのも、私たちがどう言葉にしてよいか分からない何かを、この本は伝えてくれるのだろうと思います。
今でも本棚に置いて、たまに開きます。その時々に見失っていた一番大切なものを、ふと気づかせてくれるのです。
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